Japanische Klassiker mit Furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Lesen Sie 虹の橋 (にじのはし) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.038 Zeichen · 30 Bildschirme
あさひが挨拶しかけると、
「大きな声で呶鳴らないと、聞えやしねえよ。耳が遠いんだから」
御用聞きがそばで世話をやいた。
「大阪からまいりましたものですけど」
御用聞きは横合いからひったくって、
「あんた千代さんでしょう。おばあさん、毎日、首を長くして待っていましたぜ。今日帰るか明日帰るかって」
そういうと、おばあさんの耳に口をあてて、
「お待ちかねのひとが帰ってきたよ。びっくりさせようと思って空をつかっているんだ」
おばあさんは立身になると、両手を泳がせながら、
「あら、千代さんだったの……よく帰ってきておくれだった。手紙が来てから二十日にもなるのに、音沙汰がないもんだから、どんなに心配したか知れなかったよ……お上り、お上り」
御用聞きはスーツ・ケースをひったくって、あさひを二畳へおしあげ、
「家主さんに、そう言ってくら」
むやみな声で呶鳴りながら露路を駆けだして行った。玄関の二畳、勝手につづく茶の間の六畳、狭い庭をひかえた奥の八畳という小体な住居だが、長火鉢、茶箪笥、鼠入らず、湯こぼしと、品よく、きちんとして、居なりで用が足りるようになっている。あさひを長火鉢の前におしつけると、おばあさんは、千代や、千代やと飽かずというふうにあさひの頬や肩を撫でた。