Japanische Klassiker mit Furigana
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けさともりとお
袈裟と盛遠
Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme
もしひょっとして来なかったら――ああ、私はまるで傀儡の女のようにこの恥しい顔をあげて、また日の目を見なければならない。そんなあつかましい、邪な事がどうして私に出来るだろう。その時の私こそ、あの路ばたに捨ててある死体と少しも変りはない。辱められ、踏みにじられ、揚句の果にその身の恥をのめのめと明るみに曝されて、それでもやはり唖のように黙っていなければならないのだから。私は万一そうなったら、たとい死んでも死にきれない。いやいや、あの人は必ず、来る。私はこの間別れ際に、あの人の目を覗きこんだ時から、そう思わずにはいられなかった。あの人は私を怖がっている。私を憎み、私を蔑みながら、それでも猶私を怖がっている。成程私が私自身を頼みにするのだったら、あの人が必ず、来るとは云われないだろう。が、私はあの人を頼みにしている。あの人の利己心を頼みにしている。いや、利己心が起させる卑しい恐怖を頼みにしている。だから私はこう云われるのだ。あの人はきっと忍んで来るのに違いない。……
しかし私自身を頼みにする事の出来なくなった私は、何と云うみじめな人間だろう。三年前の私は、私自身を、この私の美しさを、何よりもまた頼みにしていた。