Japanische Klassiker mit Furigana
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けさともりとお
袈裟と盛遠
Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme
ああ、己はその呪わしい約束のために、汚れた上にも汚れた心の上へ、今また人殺しの罪を加えるのだ。もし今夜に差迫って、この約束を破ったなら――これも、やはり己には堪えられない。一つには誓言の手前もある。そうしてまた一つには、――己は復讐を恐れると云った。それも決して嘘ではない。しかしその上にまだ何かある。それは何だ? この己を、この臆病な己を追いやって罪もない男を殺させる、その大きな力は何だ? 己にはわからない。わからないが、事によると――いやそんな事はない。己はあの女を蔑んでいる。恐れている。憎んでいる。しかしそれでも猶、それでも猶、己はあの女を愛しているせいかも知れない。」
盛遠は徘徊を続けながら、再び、口を開かない。月明。どこかで今様を謡う声がする。
げに人間の心こそ、無明の闇も異らね、
ただ煩悩の火と燃えて、消ゆるばかりぞ命なる。
下
夜、袈裟が帳台の外で、燈台の光に背きながら、袖を噛んで物思いに耽っている。
その独白
「あの人は来るのかしら、来ないのかしら。よもや来ない事はあるまいと思うけれど、もうかれこれ月が傾くのに、足音もしない所を見ると、急に気でも変ったではあるまいか。