Japanische Klassiker mit Furigana
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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
Lesen Sie 論語物語 (ろんごものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.688 Zeichen · 266 Bildschirme
子路は、なぜか、もう腹が立たなかった。彼は、これまでにも、何度か隠士に出会ったことがあったが、今日ほど愚弄されたことはなかった。肝心の渡場は教えて貰えないし、おまけに孔子も自分も、まるで台なしにくさされてしまったので、ふだんの彼なら、默っては引下れないところであった。しかし、今日の彼は、妙にしんみりとなってしまったのである。
隠士たちの物を茶化すような態度には、彼も流石に好意が持てなかった。しかし、彼等がいかにも自由で、平安で、徹底しているらしいのに、彼は強く心を打たれた。孔子の持たない、ある高いものを彼等は持っているのだ、とさえ彼には思えたのである。
彼は默って踵をかえした。
彼は歩を移しながら孔子の車を見た。そしてその中にしょんぼりと坐っている孔子を想像した時、彼の眼がしらが急に熱くなった。彼は存分に孔子を詰りたいような気持にさえなった。そして一散に車のところに走りつけた。
おくれていた門人たちは、すでに車の周囲に集って、何かしきりに孔子と話していた。彼等は子路が走って来るのを見ると、話をやめて一斉に子路の方に顔を向けた。子路は、しかし、彼等の誰の顔も見なかった。