Japanische Klassiker mit Furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lesen Sie 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.162 Zeichen · 59 Bildschirme
私は若い友達を伴れて再び藤坂をあがって伝通院の方へと歩いた。それは砲兵工廠の火を見るためであった。線路の上に捨てられた電車は、そのまま付近の人びとの避難所になっていた。街路の左右には避難者の人浪が打っていた。
街路のゆくてには煙が空を焦がして陽の光が黄いろくなっていた。伝通院はすぐであった。その向うには砲兵工廠の一つの建物に赤い火の這いかかっているのが見られた。大砲を打つような音が時どきした。私たちは伝通院前から右に折れた電車の線路になった坂をおりた。その広い安藤坂の中央の左側にある区役所の建物の下手になった人家の簷には、蛇の舌のような火が一面にあがっていた。私たちは坂を降りて江戸川縁を船河原橋の方へと往った。片側町の家の後はもう焼け落ちて、その火は後の砲兵工廠の火に続いていた。
私たちはそれから飯田橋を渡って甲武線の線路の上に出た。九段から神田方面にかけて一面の火の海で、中でも偕行社らしい大きな建物に火のかかっている容は悲壮の極であった。黄いろな陽の光を掠めて業風のような風が吹いて、それが焔を八方に飛ばし、それが地震で瓦を落した跡の簷のソギをばらばらと吹き飛ばしていた。