Japanische Klassiker mit Furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lesen Sie 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.162 Zeichen · 59 Bildschirme
変災序記
大正十二年九月一日の朝は、数日来の驟雨模様の空が暴風雨の空に変って、魔鳥の翅のような奇怪な容をした雲が飛んでいたが、すぐ雨になって私の住んでいる茗荷谷の谷間を掻き消そうとでもするように降って来た。私は平生のように起きて、子供たちと一緒に朝飯を喫い、それから二階へあがって机に向ったが、前夜の宿酔のために仕事をする気になれないので、籐の寝椅子によっかかりながら、ガラス越しに裏崖の草藪の方を見た。漆の木、淡竹、虎杖、姫日向葵の葉、そうした木草の枝葉が強い風に掻きまわされ、白い縄のような雨水に洗われて物凄かった。
その日はいわゆる二百十日の前日であった。室の中には南風気の生温い熱気が籠って気味が悪かった。私はもう戸外を見るのも厭になったので、そのまま眼を閉じて前夜の酒の席のことなどを考えていた。馬場孤蝶翁が銀婚式をやる年に当り、初孫も生れ、それで全集も出ることになったので、門下知友がその祝いをやるとともに、記念文集の出版の挙となり、私もその委員の一人に選まれたので、その日五六人の委員と孤蝶翁の家に集まって、文壇の各方面に原稿の寄稿依頼の手簡を出したが、終って夕飯を喫うことになり、江戸川端の「橋本」