Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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へんさいじょき

貢太郎見聞録

田中 貢太郎

Lesen Sie 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.162 Zeichen · 59 Bildschirme

Aozora Bunko

もう脂肪臭いいやな匂いがしてきた。左側の柱の燃え残りの傍に黒く焦げた一つの死体があった。それは肱から先と膝から先のない猿とも人とも判らなくなったものであった。黒焦げ死体はその二三間先にもあった。私は気味は悪かったが、それに対して別にいたましいというような感情は起らなかった。

焼け残りの建物がその先にあって、三人ばかり詰襟の服を着た者がいた。その傍にひとところ畳一枚敷ぐらいの所に火を燃やしていた。それは上にトタンを着せ、下に薪木になる柱の折れのような物を置いて何か焼いているらしかった。建物は路の角に入口を向けていた。その入口の庇の所に相生警察署巡査合宿所とした文字があった。その先は広っ場になって向うの方にたくさんの人が動いていた。こちらの合宿所の隣の広っ場の縁になった所には、一筋の縄を張って一人の兵士が張番していた。私は気がついて縄を張ってあるあたりの地面に眼をやった。黒焦げになった死体があっちこっちに散らかっていた。私はいよいよこれが被服廠跡だと思って広っ場の中の方へと眼をやった。そうして私は眼先がくらくらするように思った。

広っ場の中は一めんの死体で、ちょうど沖から帰って来た漁師が思い思いに海岸へ魚の盛りをこしらえて、仲買人の来るのを待っている時のように、人の盛りをこしらえてあった。