Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
Lesen Sie 赤い駱駝 (あかいらくだ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.820 Zeichen · 24 Bildschirme
あんな時の心理状態はとくべつだろうな。今から先の生活はどうなるか判らないのに、とにかく持てるだけ持とうというので、何に使うつもりか、通信用の発電機を荷づくりしている下士官もいるしさ。組織というものがなくなると、人間と人間を結びつけるものは何もなくなってしまったんだ。皆自分のことだけで手いっぱいで、他のことなどには無関心なふうだった。
おれはといえば、段々自分をとりもどしてきて、配給された物資を整理したり、海岸に出て海を眺めたり、一日ぼんやりそんなことさ。戦争に敗けたということが、まだはっきり頭に落ち着かず、また船便があり次第、対岸へわたって故郷にかえるということが、いっこう現実感がなかった。だからと言って今の雑然たる状態が、いやだとも快よいとも感じなかった。なにか隔てたように、ぼんやりしていた。おれもやはり、まだ少しうわずっていた訳だろう。
二見少尉の様子がどうも変だ、と二見の従兵がおれのところに来たのは、たしか三日前のことだったと思う。どうしたんだと聞いたら、従兵はすこし気味悪そうな顔をして、どうと言うことはないが何となく変だ、と答えた。
「あの日からほとんどお眠りにならないのです」