Japanische Klassiker mit Furigana
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あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
Lesen Sie 赤い駱駝 (あかいらくだ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.820 Zeichen · 24 Bildschirme
「赤い駱駝だ」
静かで確かな声であいつはそう言った。あいつの眼は瞳孔が無気味にひろがって、おれの肩越しに何かを見詰めているんだ。ぞっとしておれは振りかえった。それは夕焼の時刻だった。水平線から紅色の夕焼が立ちのぼり、それが海面にうつって朱を流したようだった。積乱雲が層をなして南の方に連なって、そこも薄紅色に美しく染っていた。あいつの眼はそれを見ていたんだ。それは見ようによっては、駱駝の背中に似ていないことはなかった。おれは二見が、あんな雲を見ていると童話をかきたくなると言ったことを、その時微かな戦慄とともに思い出した。
おれはそれから引っぱるようにして、二見を看護科へ連れて行った。看護兵らが薬品類を衣嚢にぎしぎしつめこんでいる中を、おれたちは入って行った。空箱や薬瓶が散乱して足のふみ場もなかった。
しかしこんな状態では、はっきりした診断が出来るわけもなかった。軍医長の心も浮足立っていたし、患者よりも薬品の処理の方に心をうばわれている風なんで、結局鎮静剤をくれただけで、便がありしだい故郷に帰すがよかろうと言うだけだった。それからまた二見をひっぱって、あいつの居室へひっぱって行こうとしたら、あいつは何を思ったのか、かなり烈しく抵抗した。