Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.351 Zeichen · 43 Bildschirme
、一生捨てないで――って云やあがった。
猪之は右の掌を着物へこすりつけた。なにか粘った物でも付いているように、二度も三度もこすりつけ、そして顔をしかめた。
――それがなっちゃねえのか。
――おれは吐きそうになった。あにきは知らねえだろうが、あぶら汗で温かい、ぼってりした手でぎゅっと握られ、一生捨てないでなんて、それがまた甘ったるいへんな声なんだから、おれは断わりなしに背骨を抜かれちまったような、いやーなこころもちになって逃げだして来たんだ。
――これから夫婦になる者が、一生捨てないでくらいのことを云うのはあたりめえじゃねえか。
――あにきは云われたことがあるか。
――世間一般のことを云ってるんだ。
――云われてみな、一遍、そうすりゃあこの穴ぼこへおっことされるような気持がわかるから。
――いろいろなことを云やあがる。
吐きそうな気持だの、断わりなしに背骨を抜かれたようなこころもちだの、こんどは穴ぼこへおっことされるような気持だのって。やい、背骨なんてものは断わってから抜くものか。だからよ、と猪之は云った。抜かれねえさきに断わろうっていうんだ。
「勝手にしやあがれ、って私は云ってやりました」