Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

Lesen Sie 運命のままに (うんめいのままに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.406 Zeichen · 57 Bildschirme

Aozora Bunko

私はその重苦しい気分に浸りながら、殆んど時の過ぎるのをうち忘れた。英子からも、またお島からも、何の便りもなかった。私はその日朝から一歩も外に出ないで、空虚な自分の心を懐いて空な一日を過した。敗残者の疲労がしみじみと身に感ぜられた。然し私の心は重苦しく落ち付いていたのである。

夜の八時頃、私は俥屋が持って来たお島からの手紙に飛び起きた。私はすぐに外に出た。然し何処にお島が居るか、さっぱり見当がつかなかった。仄暗い通りをすかし見ながら、横町を曲ると、電柱の影にお島がぼんやり佇んでいた。

「どうしたんだい。」と私は思わず叫んだ。

「あなたを待ってたの。」とお島は落ち付いた調子で答えた。

「なぜあんなことをするんだい。下宿に来ればいいじゃないか。」

「でも嫌だから。」

何が嫌だか私には分らなかった。

私達はただ無意味に歩き出した。叔母さんが居ないから一寸出てきた、心配していたがお目にかかれて嬉しかった、とそんなことをお島は云った。然し私達の間には別にこれといって話の種もなかった。私は彼女を自分の懐のうちに感ずるような気がして、何にも聞かないでもよく分るような安らかな気持ちを覚えた。