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Japanische Klassiker mit Furigana

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こうがいせいかつのいちねん

郊外生活の一年

岡本 綺堂

Lesen Sie 郊外生活の一年 (こうがいせいかつのいちねん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.728 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

感じた。

「郊外はいやですね」と、市内に住み馴れている家内の女たちはいった。

「むむ。どうも思ったほどに好くないな」と、わたしも少しく顔をしかめた。

省線電車や貨物列車のひびきも愉快ではなかった。陸軍の射的場のひびきも随分騒がしかった。戸山が原で夜間演習のときは、小銃を乱射するにも驚かされた。湯屋の遠いことや、買物の不便なことや、一々かぞえ立てたら色々あるので、わたしもここまで引込んで来たのを悔むような気にもなったが、馴れたらどうにかなるだろうと思っているうちに、郊外にも四月の春が来て、庭にある桜の大木二本が満開になった。枝は低い生垣を越えて往来へ高く突き出しているので、外から遠く見あげると、その花の下かげに小さく横たわっている私の家は絵のようにみえた。戸山が原にも春の草が萠え出して、その青々とした原の上に、市内ではこのごろ滅多に見られない大きい鳶が悠々と高く舞っていた。

「郊外も悪くないな」と、わたしはまた思い直した。

五月になると、大久保名物の躑躅の色がここら一円を俄に明るくした。躑躅園は一軒も残っていないが、今もその名所のなごりを留めて、少しでも庭のあるところに躑躅の花を見ないことはない。