Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とかいのゆうき

都会の幽気

豊島 与志雄

Lesen Sie 都会の幽気 (とかいのゆうき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.559 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

そこでほっとして煙草を吹かしたが、私は飛び上らんばかりに驚いた。

煙草の煙がふうわりと立昇って、ゆらゆらと消えてゆくあたりに、あるかなきかの濛気が、人の姿となって、床の間の落掛から下っている。びっくりして見上げるはずみに、昨夜の夢をまざまざと思い起した。そして気がついてみると、自分の倚ってる机も火鉢の火箸も、夢の中の机や火鉢とそっくり同じものだった。ただ麻縄がないだけだったが、それも窓の外の手摺に雨曝しとなって掛ってるのを、いつか見たような気がし初めてきた。わざわざ雨戸を開けて見定めるだけの勇気も、もう私には出なかった。それどころではなかった。頭の上の落掛からぶらりと死体が下ってきた。眼をやると消え失せるが、一寸でも眼を離すとまた下ってくる。私は怪しい気持になって、比較的新しい落掛をいつまでも見つめていた。するといつのまにか自分がふらふらと立上って、其処の壁に穴をあけ、麻縄で輪を拵え、机を踏台にしてぶら下る……と思っただけでぞっとして、それが却て一種の衝動となり、蜘蛛の糸ででも縛られるように、身動きが出来なくなった。少しでも身を動かしたら、私はそこにぶら下るかも知れない……と思うせいか、もうぼんやりと落掛の所から、人の下ってる無惨な姿が見えてくる。