Japanische Klassiker mit Furigana
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そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Lesen Sie 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.471 Zeichen · 28 Bildschirme
7
彼女の機体は矢のように落下して行った。
「沙里子さん、沙里子さん」
自分は送話器に口をあてて、こう叫び続けた。湖水の水面とすれすれに幾度か飛び廻った。しかし、どこにも彼女の姿は見えなかった。親友、清川のみか、愛する彼女までも呑みこんだ漆黒の湖水面は、物凄いまでに静寂そのものだった。
7
ゆうべのように今夜も星が美しい。海面から五十米突の低空を、私は東へ東へと飛び続けている。私の愛機は、あと数時間で、主人もろとも、波荒い太平洋の藻屑となることも知らずに、いとも調子よく活動を続けている。
沙里子は自分達二人を同じ程度に愛している、と私は思いつめていた。しかし、彼女の心の底に刻み付けられていた者は、清川一人であったのだ。私は潔く二人から手を引くべきであった。
自分達に態度を明らかにしなかった彼女にも一半の責はある。しかし、何故、私は彼女のそうした心持ちを看取することが出来なかったのであろう。私の自負心は、私にこう考えさせていた。
――彼女は自分でも云っているように、彼と自分とを同じ程度に愛しているのだ。
と、私は自分に、こう云った。
――よし、では、自分が彼女の心を決してやる。