Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
山本 周五郎
Lesen Sie 野分 (のわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.401 Zeichen · 42 Bildschirme
「老いぼれてもおらあ江戸っ子だ、そんなむごい、不人情なことに眼をつむる訳にはいかねえ、人に泣きをみせてまで、自分の孫を仕合せにしたかあねえ、おらあ酔った、……しらふじゃあ舌が動くめえと思ったから、泥のように酔って、死ぬ思いで、あんな作りごとを云ったんだ、……ああ云えばおまえにみれんも残るまい、いっときの嘆きで忘れて呉れると思ったから」
「わかったわお祖父さん」お紋は空洞を風がはしるような、うつろな声で云った。「……よくわかってよ、恨んだりして、あたしがいけなかったわ」
「そう云って呉れるか、本当にそう思って呉れるのかお紋」
「お祖父さんの孫じゃないの」お紋は眼をかえして老人を見、片頬にえくぼをよらせながら云った、「……あたしだって江戸っ子だわ」
そして笑おうとしたが、こみあげてくる涙を隠しようもなく、前垂で面を掩いながら、声をあげて泣きだした。藤七は孫娘の肩へ手をまわして、かたくひき寄せた、どんな慰めの言葉があるだろう、胸も裂け眼も昏むおもいで、ただ老いの手にかたく抱き緊めるばかりだった。
「また引越しましょう、お祖父さん」噎びあげながらお紋が云った。「……さっきお糸さんが、此処にいることを若さまに教えると云ったわ、もしかしておいでになったら、あたしとても、……こんどはとても、だめよお祖父さん」