Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
山本 周五郎
Lesen Sie 野分 (のわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.401 Zeichen · 42 Bildschirme
然しいちどその事実がわかると同時に、彼の身辺が忽ち虚構と偽善と阿諛で塗り固められ、彼を中心にして家臣のあいだに対立と暗闘の始まったのを見て、彼はようやくおのれの身分と境遇を詛うようになった。然もまだ彼が世子と決定したわけではない、江戸家老の馬場庄左衛門ら一派は、正陟の女で他へ嫁したものが二人あり、そのうち摂州浅田の領主で、かいのかみ青木重安に嫁いでいる松姫に男子が三人ある、その中から世子を迎えるのが正統だと云って、かなり頑強に主張しているのだった。そして詮じ詰めたところ、どちらが選ばれるにしても、結局は権勢争奪の傀儡であって、自分にはまったく去就の自由の与えられていないということが、譬えようもなく彼を虚無的にしてしまった。
「この落葉のように」と、又三郎は哀しげに呟いた、「……風に吹き巻かれて、好みもしないほうへ、飛ばされてゆくんだ、自分ではどうしようもなく、――これでも人間の生き方といえるだろうか」
冬の前触れのような、冷たい雨が三日ほど降り続いた、侘しく悲しく、めいるような雨だった。廂ごしにその雨を見ているうちに、彼は云いようのない孤独な寂しさに襲われ、なにかに追われるような気持で外へ出ていった。