Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
八
「厭なかたね」
金剛石がきらりとひらめいて、薄紅の袖のゆるる中から細い腕が男の膝の方に落ちて来た。軽くあたったのは指先ばかりである。
善人の会話は写真撮影に終る。
八
秋は次第に行く。虫の音はようやく細る。
筆硯に命を籠むる道也先生は、ただ人生の一大事因縁に着して、他を顧みるの暇なきが故に、暮るる秋の寒きを知らず、虫の音の細るを知らず、世の人のわれにつれなきを知らず、爪の先に垢のたまるを知らず、蛸寺の柿の落ちた事は無論知らぬ。動くべき社会をわが力にて動かすが道也先生の天職である。高く、偉いなる、公けなる、あるものの方に一歩なりとも動かすが道也先生の使命である。道也先生はその他を知らぬ。
高柳君はそうは行かぬ。道也先生の何事をも知らざるに反して、彼は何事をも知る。往来の人の眼つきも知る。肌寒く吹く風の鋭どきも知る。かすれて渡る雁の数も知る。美くしき女も知る。黄金の貴きも知る。木屑のごとく取り扱わるる吾身のはかなくて、浮世の苦しみの骨に食い入る夕々を知る。下宿の菜の憐れにして芋ばかりなるはもとより知る。知り過ぎたるが君の癖にして、この癖を増長せしめたるが君の病である。