Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
十二
「ちっとは、好い方かね」と枕元へ坐る。
六畳の座敷は、畳がほけて、とんと打ったら夜でも埃りが見えそうだ。宮島産の丸盆に薬瓶と験温器がいっしょに乗っている。高柳君は演説を聞いて帰ってから、とうとう喀血してしまった。
「今日はだいぶいい」と床の上に起き返って後から掻巻を背の半分までかけている。
中野君は大島紬の袂から魯西亜皮の巻莨入を出しかけたが、
「うん、煙草を飲んじゃ、わるかったね」とまた袂のなかへ落す。
「なに構わない。どうせ煙草ぐらいで癒りゃしないんだから」と憮然としている。
「そうでないよ。初が肝心だ。今のうち養生しないといけない。昨日医者へ行って聞いて見たが、なに心配するほどの事もない。来たかい医者は」
「今朝来た。暖かにしていろと云った」
「うん。暖かにしているがいい。この室は少し寒いねえ」と中野君は侘し気に四方を見廻した。
「あの障子なんか、宿の下女にでも張らしたらよかろう。風が這入って寒いだろう」
「障子だけ張ったって……」
「転地でもしたらどうだい」
「医者もそう云うんだが」
「それじゃ、行くがいい。今朝そう云ったのかね」
「うん」
「それから君は何と答えた」