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Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

……」

鉛筆の音がする。

「それは何だと云うと――恋である……」

道也先生はぴたりと筆記をやめて、妙な顔をして、相手を見た。中野君は、今さら気がついたようにちょっとしょげ返ったが、すぐ気を取り直して、あとをつづけた。

「ただ恋と云うと妙に御聞きになるかも知れない。また近頃はあまり恋愛呼ばりをするのを人が遠慮するようであるが、この種の煩悶は大なる事実であって、事実の前にはいかなるものも頭を下げねばならぬ訳だからどうする事も出来ないのである」

道也先生はまた顔をあげた。しかし彼の長い蒼白い相貌の一微塵だも動いておらんから、彼の心のうちは無論わからない。

「我々が生涯を通じて受ける煩悶のうちで、もっとも痛切なもっとも深刻な、またもっとも劇烈な煩悶は恋よりほかにないだろうと思うのです。それでですね、こう云う強大な威力のあるものだから、我々が一度びこの煩悶の炎火のうちに入ると非常な変形をうけるのです」

「変形? ですか」

「ええ形を変ずるのです。今まではただふわふわ浮いていた。世の中と自分の関係がよくわからないで、のんべんぐらりんに暮らしていたのが、急に自分が明瞭になるんです」