Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

「うんそうか。それでも昨日の日暮れおれが寄ったら、刈り上げで餅をついたから食っていかねいかって、二人がうんやなやでやってたよ」

「うん、あん嬶いつもそうさ。やっぱり似たもの夫婦だよ。アハハハハハ」

それから何か次の話が出そうですこぶるにぎやかだ。省作も思わず釣りこまれてひとり笑いしていると、細目にあいてる戸の間から白い女の顔がすっと出た。省作ははっとする間もなくおとよさんは、風呂の前へきて小声で「今晩は」という。省作はちょっと息つまって返辞ができないうちに、声かすかに、

「お湯がぬるくありませんか」

「ええ」

「少し燃しましょう」

おとよさんは風呂の前へしゃがんで火を起こす。火がぱっと燃えると、おとよさんの結い立ての銀杏返しが、てらてらするように美しい。省作はもうふるえが出て物など言えやしない。

「おとよさんはもうお湯が済んで」

と口のうちで言っても声には出ない。おとよさんはやがて立った。

「おオ寒い、手がつめたい」

と言って二本のまっ白い手を湯の中へ入れる。省作はおとよさんの手にさわってはたいへんとも何とも思わないけれど、何となく恐ろしくからだを後ろへ引いた。