Japanische Klassiker mit Furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme
四
土屋の家では、省作に対するおとよの噂も、いつのまにか消えたので大いに安心していたところ、今度省作が深田から離縁されて、それも元はおとよとの関係からであると評判され、二人の噂は再び近村界隈の話し草になったので、家じゅう顔合せて弱ってる。おとよの父は評判のむずかしい人であるから、この頃は朝から苦虫を食いつぶしたような顔をしている。おとよの母に対しては、これからは、あのはまのあまなんぞ寄せつけてはならんぞとどなった。
おとよはそれらの事を見ぬふり聞かぬふりで平気を装うているけれど、内心の動揺は一通りでない。省作がいよいよ深田を出てしまったと、初めて聞いた夜はほとんど眠らなかった。
思慮に富めるおとよは早くも分別してしまった。自分にはとても省さんを諦められない。諦められないことは知れていながら、余儀ないはめになって諦めようとしたものの駄目であったのだから、もうどうしたって諦められはしない。今が思案の定め時だ。ここで覚悟をきめてしまわねば、またどんな事になろうも知れない。省さんの心も大抵知れてる、深田にいないところで省さんの心も大抵知れてる。