Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
三
女中が電話だといいに来た。出てみると伊作からだった。
「なんなのよ、ひとを、こんなに待たせて」
「用事がかさなって、すぐには、ぬけられそうもない。代人をやるから、待たずに、はじめてくれよ。ゆっくりやっていてくれれば、終るころくらいには行けるから」
「ちょっと待って……代人って、なんなの。あまり、へんなひとを、よこさないでちょうだいよ」
「君も知っているだろう。正金銀行のボストンの支店長をしていた幹さん」
「知ってるわ。幹利吉雄さん」
「あのひとのお嬢さんの杜松さんと、巴里でおなじキャンプにいたんだが、横浜で焼けた幹さんの疎開先がわからないというから、探しあてるまで、しばらく、うちでお世話してあげたいと思って……」
「あなたにしては、神妙な話ね。ええ、よくわかったわ。その方が代人?」
「十分ほどしたら、そちらへ行くから、よろしく」
三
杜松という娘の顔を、滋子は、あっけにとられてながめながら、生まれてからまだ、こんな美しい膚の色も、こんな完全な横顔も見たことがなかったと思った。栗梅の紋お召の衿もとに白茶の半襟を浅くのぞかせ、ぬいのある千草の綴錦の帯を高めなお太鼓にしめ、羽織は寒色縮緬の一つ紋で、振りから、大きな雪輪の赤い裏がみえた。