Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
ご用はそれだけ? それで、いまどこにいらっしやるの?」
と、たずねた。思わず声が震えた。久我は、いま本庁の特高課にいると、こたえた。葵は泣きだしたいのをこらえながら、息をつめてとぎれとぎれに、いった。
「……それから、さっきはごめんなさい。あたし、どうかしてたんです。ゆるしてちょうだい。……どうぞ、あたしをいやになったりしないでね。……それから、上高地へ行きましょうね。出来るだけはやく。……こんな神経質では、あなたを困らせるばかりだから……え、そうよ。明日でもいいわ。たくさんお話ししたいことがありますから、なるたけ早く帰ってちょうだい」
久我は、そうときまったら明日にも発とう。旅費は、不愉快だが乾に借りてもいいのだから。……そういって、電話を切った。
〈この声は、どこかでいちど聴いたことがある。と、葵はかんがえた。……そうだ、葵に遺産遺産相続の通知をした「あの女」の声だ。神戸のトア・ホテルでもそう思った。あの時は気のせいだろうと打ち消したが、こんどはもう紛れもない。おしだすようなこの錆声、すこし訛のあるずの音、舌が縺れるようなこの早口な言いかた……。