Japanische Klassiker mit Furigana
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きんぎょ
金魚
豊島 与志雄
Lesen Sie 金魚 (きんぎょ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.765 Zeichen · 8 Bildschirme
胸がむしゃくしゃしながら、心が滅入っていた。何のために金魚を買ったのか分らなくなった。日が西に傾いて、街路の空気が妙に慌しかった。彼は渋面をしながら、重い金魚入れを下げて、足を早めた。
下宿までは可なり遠かった。電車は込み合っていた。漸くのことで電車に乗ると、ぎっしり人込みの中に挟み込まれてしまった。金魚のことが気にかかった。然しどうにも仕様がなかった。片手で吊革につかまりながら、片手でやたらに肱を張って、金魚入れをかき抱くようにした。
無事に下宿の近くの停留場まで来ると、大きな金魚入れを下げては中々降りられなかった。まごまごしているうちに電車は動き出した。
「下りるよ、下りるよ、」と彼は叫んだ。「降りますか、お早く願います、」と車掌は云いながら、強く鈴の綱を引いた。電車は急に止った。ごとんと反動が来た。彼は人並に揺られて、金魚入れを落してしまった。硝子の容器が壊れた。水がぱっと飛び散った。立込んだ人々は、驚いて一時に飛び上った。「金魚だ、金魚だ!」という声がした。
彼は夢中になった。いきなり身を屈めて、泥床の上にはね廻っている二匹の金魚を両手に掴むと、それを振り廻しながら、むちゃくちゃに人を押し分けて、電車から飛び下りた。