Japanische Klassiker mit Furigana
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きんぽうさいき
金鳳釵記
田中 貢太郎
Lesen Sie 金鳳釵記 (きんぽうさいき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.167 Zeichen · 13 Bildschirme
崔興哥は春風楼を目的にして来た。そこには彼の往こうとしている呉防禦という富豪の家があった。少年の時、父に伴われて宣徳府へ行ったきりで、十五年間一回もこの揚州へ帰ったことのない興哥は、故郷とはいえ未知の土地へ来たと同じであった。彼は人に訊き訊きして、もう陽の落ちる頃、やっと呉防禦の家へ著いた。
表門を入って中門の前へ往ったところで、下男が門を締めようとしていた。興哥は手をあげて下男を招いた。
「わしは、旅から帰ってきた興哥じゃ、旦那様にお眼にかかりたいから、取次いでくれないか」
下男は不審そうに興哥の風采をじろじろ見てから入って往った。興哥はそこへ立って黄色に夕映した西の空を見ていた。
下男が急ぎ足で引返してきた。その下男は初めの態度と打って変って恭しくなっていた。
「旦那様が大喜びでございます、さあ、早くお入りくださいますように」
興哥は入って往った。そのまわりの庭の容に見覚えがあるような気がした。室の中へ入ると防禦が出てきて立っていた。
「おお、興哥さんか、暫く逢わない間に、立派な男になった、さあ、おあがり、話したいことが山のようにある」
興哥はほんとうの父親に逢ったように涙ぐましい心地になって、ちょっと挨拶をしながら防禦に随いて往った。