Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎんさんじゅうまい
銀三十枚
国枝 史郎
Lesen Sie 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.863 Zeichen · 73 Bildschirme
私が散歩でもしようとすると、彼女はきっと呼び止めた。立ったまま私を抱き介え、少しおデコの彼女の額を、私の額へピッタリと食っ付け、梟のように眼を見張り、嚇かすように頬を膨らせ、
「いい事よ、行っていらっしゃい」
こう云ってようやく放してくれた。が、それも遣らなくなった。
泣くことの好きな女であった。ある朝私は顔を洗い、冷たい手をして居間へ行った。と、彼女が化粧をしていた。胸が蒼白くて綺麗だった。冷たい手先をおっ附けてやった。それが悲しいといって泣き出した。大変美しい泣き方であった。勿論拵えた媚態であった。それが彼女には似つかわしかった。が、それもやらなくなった。
笑うことの上手な女であった。「無智の笑い方」が上手であった。利口な彼女が笑い出すと、無智な無邪気な女に見えた。それこそ実際男にとっては、有難い笑いと云わなければならない。瞬間に苦労が癒えるからであった。が、それもやらなくなった。
彼女は不思議な女であった。千里眼的の所があった。ウイスキイの二三杯もひっかけて――私は元は非常な豪酒で、一升の酒は苦しまずに飲んだ――門の格子を静かにあけると、きっと彼女は云ったものである。