Japanische Klassiker mit Furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme
「まあ、お待ちなさいよ」と、お此はお元をなだめるように言った。「そう事が判れば、わたし達のほうにも又なんとか考えようがある。ともかくも今すぐに出て行くのはよくない。もうちっとの間、知らん顔をしていておくれよ。」
「それがいい。」と、七兵衛も言った。「いずれ何とか処置を付けるから、もうちっと落ちついていてくれ。私のほうでも自分の暖簾にかかわることだから、決してこれを表沙汰にして、おまえを騙りの罪に落すようなことはしない。まあ安心して待っていてくれ。」
夫婦からいろいろに説得されて、お元もおとなしく承知した。
「それでは何分よろしく願います。」
自分の部屋へ立去るお元のうしろ姿を見送って、深い溜息が夫婦の口を洩れた。いかにお此が弱い気になったからといって、すでに偽者の正体があらわれた以上、それをわが子として養って置くことは出来ない。さりとて、その事実をありのままに世間へ発表することも出来ない。しょせんはお元に相当の手切金をあたえて、人知れずにこの家を立ちのかせ、表向きは家出と披露するのが一番無事であるらしい。勿論それも外聞にかかわることではあるが、偽者と知らずに連れ込んだというよりはましである。