Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
遠山は辞を低うしてその邸に伺候した種彦をば喜び迎え、昔に変らぬ剰談ばなしの中にそれとつかず泰平の世は既に過ぎ恐しい黒船は蝦夷松前あたりを騒がしている折から、世は上下とも積年の余弊に苦しみつかれている様を見ては、われ人共に公禄を食むもの及ばずながらそれぞれ一廉の忠義を尽さねばなるまいと、衷心から湧起る武士の赤誠を仄見せて語ったその態度その風采。種彦はどういう機会かわが身の今日と彼れ遠山の今日とを思比べて、当世の旗本風情にもまだまだあんな立派な考えを持っているものがあるのか知らと思うと、そもそも我から意識して戯作者となりすました現在の身の上がいかにも不安にまた何とも知れず気恥しいような気がしてならなくなった。しかしいかほど深い感慨に沈められても種彦は今更それをば船中のものに向って語り聞かせる訳には行かぬ。よし話すにしてもこの場合思うように打明けて語り得られるものではない。さされた酒杯をばさされるままに呑み干しては返し、話掛けられる話を、心もよそに唯受答えをするばかり。船はいつしか狭い堀割の間から御船手屋敷の石垣下を廻ってひろびろとした佃の河口へ出た。