Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

Lesen Sie 雪の上の霜 (ゆきのうえのしも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.586 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

「お忘れですか」伊兵衛は笑ってみせた、「――いつか貴方の荷物を持たせて貰ったでしょう、吉田宿から峠の茶屋まで」

男は「ギ」という声を出した。「ジ」かもわからない、ともかくそんなふうな声を出し、片手で両掛と笠を掴んだ。

「おわかりになったでしょう」伊兵衛はあいそよく云った、「――あのときの私です、面白かったですねえあれは、あの茶屋で頂いた駄賃が石ころに化けたときは」

男は颯と消えた。両掛と笠を掴んで、横っとびに外へとびだしたのだが、あまりに敏速なので、消え失せたように見えた。

「あっ、もしもし」伊兵衛もあとから追って出た、「もしもし、どうしたんですか」

見ると、男はもう五六丁も先を走っていた。すばらしい速力で、うしろに埃の帯を曳きながら、たちまち小さく、ぐんぐん遠く……。

「どうしたんだろう」伊兵衛は後頭部を掻きながら、不審に耐えぬもののように、口のなかで呟いた、「――おかしな人があればあるものだ」

おたよが出て来て告げた。

「あなた、お支度ができてまいりました」