Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
トランクはどこへ行ったろう。
店員はそれを発見するのに大して骨を折らなかった。その赤革のトランクは、金色の金具を午後の太陽の反射光で眩しく光らせながら、広い道路を半分ばかり渡り、地上約三尺ばかりの高度を保って、なおも向いの側の人道へ辿りつこうとしていた。
と、左の方から一台のトラックが疾走して来て、呀っという間にそのトランクに突きあたった。トランクは、フットボールのように弾かれて上へ舞いあがった。と思う間もなく下へ落ち始めた。するとその下へトラックの車体がすうっと入って来て、トランクを受け留めた。そのトラックは空であった。そのトラックは、始めトランクに突き当ったそれだった。かくしてそのトラックは速力を緩めることなしに、店員にガソリンの排気をいやというほど引掛けて遠去かっていってしまったのである。
店員は、トラックの番号を覚えることさえ忘れて、呆然と立ちつくしていた。なんという気味のわるいトランクだろう。豚のように跳ねあがり、通りすがりのトラックへとびこんで逃げてしまいやがった。これで、今朝、顔色のわるいカーキ服の男から三百円で買い取った品物をなくして、三百円丸損となってしまったぞと、大いに恨めしく思った。