Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
へと彷徨い出たものとは思わず、その事実を推理し得た者はなかったのである。
それからそのトランクはどういう出来事にぶつかったか。
外濠の堤の松の下の暗闇を連れだって行く若い女と男とがあった。女は男に対して強硬な態度をとって、男を引放してずんずん足を早めていた。その女はやがて――そのままで推移せば男のために締め殺されて、枯草の上に身を横たえなければならないのであったが、運命のくすしき足取は、女の生命を危局の寸前に救った。それは今や鼠に向って躍りかかろうとする猫の如きその男の腰に、どすんと突き当った赤革のトランク一箇――女は生命を捨てずに済んだ。男は荒療治を決行するに及ばなかった。男も女も、一応妖異に対する恐怖心を起しかかったが、それは慾心によって簡単に撃退された。開いた鞄の中のすごい内容物はあらゆる問題を解決した。女は急に男に対してやさしくなり、そしてその鞄を二人で守って男のアパートへ入り、同棲生活の第一夜を絢爛と踏み出すことに両人の意見は完全なる一致をみたのであるが、この詳細もここにくだくだしく描写している遑はない。
それよりは問題はトランクの運命にある。