Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.621 Zeichen · 25 Bildschirme
……人間が煙のように消えるわけはなく、また船からぬけた証拠がないとなると、これは始めっからだれも三崎丸に乗ってはいなかったのだとかんがえるほかはない。とすると、どうして船がひとりで相模灘まで流れて行った?……しかし、まアこのほうはわけはなかろう。御船蔵につないでおいた安宅丸が、鎖を切ってひとりで三崎まで流れていったためしもあるんだから、ちょっと細工さえすりゃア雑作なくやれそうだ。……お前も知っている通り、十五日は朝から夕方にかけて、かなり強い西北の風が吹いた。大帆をかんぬきがけにして舵をしっかりと楫床へくくりつけ、追風に吹かせて真南へつっぱなせば、船はひとりでに相模灘へ出て行く、まかり間違って伊豆の岸へでもぶっつかって沈んだら、それはそれで結構。……ここまではわかったが、むずかしいのは、丸一日半をおいた十七日の朝、つまり鰹船の漁師が乗りうつったときに、釜場の竈の下に火が燃え、二番炊きの飯が噴きこぼれそうになっていたというこの一点だ、……これにはおれも頭をひねった。油灯のほうは、たっぷり菜種油を入れてさえおけば、二日や三日は燃えつづける。そのほうはいいが、どうしても飯のほうだけがわからない。