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Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.712 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

それにしても、濡れ仏とは縁起でもないことを言いなさる」

ひどく上機嫌にしゃべり立てるのを、長崎屋は、手でおさえるようにしながら、

「いくら夏の雨でも、そんなことをしていては、からだに障る……ひと風呂あびて、浴衣にも着かえていらっしゃい。……いま、湯殿へ案内させますから……」

佐原屋は、ひょうきんに顔を顰めて、

「雨水が咽喉へはいって気色が悪くていけねえ。……風呂へ入る前に、葡萄酒を一杯いただこうか」

と、言いながら、絨毯を踏んで座敷のほうへ入りかけようとした途端、ドツと吹きこんで来た川風に、蝋燭の灯があおられてフッフッと次々に吹き消え、部屋の中がまっ暗になった。

「おッ、これはいけない」

「灯し、灯し……」

口々に騒いでいるうちに、闇の中で、ううむ、と奇妙な唸り声がきこえだした。

「そこで唸っているのは佐原屋さんか? まるで縊め殺されるような声を出すじゃないか」

「佐原屋さん、子供でもあるまいし、つまらない真似はおよしなさい」

「ほんとに、気味の悪い声だぜ」

そうしているうちに、長崎屋が、地袋の棚から早附木をさぐり出してきて蝋燭の火をともす。

「やれやれ、やっと明るくなった」