Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.712 Zeichen · 29 Bildschirme
水からあがったように、頭から爪先までグッショリ濡れたまま、おどけた恰好で座敷の入口に突っ立ち、団十郎張りの大きな目玉を笑いたそうにギョロギョロさせている。
一同、そちらへ振りかえったが、あまりおかしな様子をしているので、思わず噴きだしてしまい、
「は、は、は……佐原屋さん、ひどい目にあいなすったね。それじゃア濡れ鼠どころじゃない、まるで、濡れ仏だ」
和泉屋が言うと、日進堂も腹をかかえながら、
「濡れ仏、とは、うまいことを言ったもんだ……額からしずくをたらしながら、そうして目玉をむいて突っ立っているところなんざ、牛込浄源寺の弥勒仏そっくり。……これが、江戸一の開化人だとは、とても、信じられぬくらいだ」
と、ひやかすと、佐原屋清五郎は、なんのせいかひどく赤らんだ額のしずくを、手のひらでぬぐいながら、
「その馬鹿なところを、ちょいとお目にかけようと思って、こうしてここに突っ立っているのさ。……いやはや、急々如律令……山谷を漕ぎだすと、いきなり、ドッと横ッ吹きの大土砂降り。……大川のド真中だから、今さら引っかえすわけにもゆかず、板子をひっかぶってしのいでいたが、とうとう下帯までグッショリになってしまった。