Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.904 Zeichen · 28 Bildschirme
「すウしや、小鰭のすウし――」
と、触れてゆく。
なにしろ、所作と振り事にかけては五代目をしのぐと言われた名手の三津五郎。これが粋と鯔背の代表のような鮨売になっているんだから震いつきたくなるようないい姿。ちょっとした身体こなしにもきちんとキマっていて、なんとも言えず美しい。
その上、せいぜい三津五郎とさとらせたいというのだから、万事芝居がかりに、輪をかけた綺麗事でゆく。どう見たって、ただの鮨売じゃない。
「そら、三津五郎が来た」
というので、露地から駈けだす、門から飛びだす。齢ごろの娘、大年増の内儀や女中までが、
「あなた、大和屋さんでしょう。あてましたから、どうぞお印物を……」
「どうぞ、わたしにも」
右左から取りついて、やいのやいのとたいへんな騒ぎ。
三津五郎は、精いっぱい気障に、
「はい、わたしが三津五郎。近々中村座で新作の所作を出しますについてなにとぞご贔屓に。はい、どうぞよろしく」
と、愛想をふりまく。
もうこのくらいに評判を立てておけばもう引っこんでもいいころ。鮨の呼売りはこの正午で中止にしようという申しあわせ。
清住町のひとかわを呼売りしたらこれでチョンということにし、今までの骨折りやすめに深川の大清で四人で大騒ぎをしようというのでもう席まで取ってある。