Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.527 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

なにかすこし変った噂をききつけると、寄ってたかって根ほり葉ほり探り出し、その結果をもって息せき切って駈けつけてくる。顎十郎は、いっこう気のないようすで、ふん、ふんとそれを聞き流している。全くもってふしぎな関係である。

大名の上屋敷、中屋敷、合せて五百六十、これに最少四人二分を乗じただけの人数が、顎十郎の手足のように働くとしたら、これまた一種端倪すべからざる勢力である。

まず、だいたいこんなようなあんばい。欲すると否とに拘わらず、ぼくねんじんの顎十郎がいつの間にか、江戸でこんな大勢力になっているということは、たれもあまり知らない。いわんや、叔父の庄兵衛などが知ろうはずがない。馬鹿めが中間部屋にばかり入りびたる、といって外聞悪がるのである。年がら年中、一枚看板の袷をひきずり、夕顔に眼鼻をつけたような、この異相の勤番くずれのどこがよくて、こうみなが惚れるのか、これこそは全くもって不思議。

さて、不思議はふしぎとしておいて、顎十郎は、このへんでようやくパッチリと眼をひらく。もういっぺん伸びをして起上ってあぐらをかくと、まったく、間髪をいれずというふうに、小者がスッと箱膳を運んでくる。