Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.327 Zeichen · 43 Bildschirme

Aozora Bunko

……これは余談ですが、手前に言わせれば、芳太郎の凧は合図でもなんでもありゃしない、いわんや、結び文などはもってのほか。……あなたは、その凧に結び文をつける約束ができていて、石船のほうでそれを雁木にひっかけて持って行ったのだと言われる。……ところで、そんなことは、まるっきりなかったんです」

藤波は含み笑いをして、

「ほほう、まるで、見ていたようなことを言う。……そんな大きな口をきくからには、なにか、たしかな証拠でもあるのでしょうな」

「あればこそ、こんなふうにも申しているんです。……その証拠をお目にかけますから、まあ、こちらへいらっしゃい」

顎十郎は先に立って厩を離れ、矢場ののうしろをまわって塀ぎわのひろい空地に出ると、急に足をとめ、蟠屈たる大きな老松の梢をさしながら藤波のほうへ振りかえり、

「芳太郎の凧が、合図でもなんでもなかったという証拠は、まず、あの通り、……芳太郎の凧は、雁木にからめて奪られたんでもなんでもない。あれ、あの枝にひっからまってブラさがっています」

指さされたほうを見あげると、いかにも、まだ紙の色もまあたらしい白地に赤二引の丹後縞のけん凧がブラさがって、ブラブラと風に揺れている。