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Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.028 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

……どうだ、藤波、勝算があるか。……それとも、また、北の顎十郎にシテやられるか」

藤波は返事をしない。削ぎ立てたようなトゲトゲした顔を狷介にふり立て、けわしく眼を光らせながら、そっぽをむいている。

名人気質とでもいうのか、辛辣で傲慢で変屈で、あまりひとに好かれぬ男。三百六十五日、機嫌のいい日はないのだが、とりわけこのごろは虫のいどころが悪いらしい。

北町奉行所の与力筆頭、森川庄兵衛の甥の仙波阿古十郎。出来そこないの冬瓜のような方図もない顎をぶらさげ、白痴か薄のろかと思われるような間のびのした顔をしているくせに、感がいいというのか、どんな入りくんだアヤでも、なんでもないようにスラスラと解く。もう一歩というところで、いつもひと足さきに出しぬいてしまう。それに、やりかたが憎い。自分の手柄を一切合財、叔父の庄兵衛になすりつけ、どこを風が吹くといったようにすっとぼけている。

今までは北町奉行所などはあるかなしかの存在。番所といえば南のことにきまっていたくらいなのに、この男が北へあらわれてから、急にこちらの旗色が悪くなった。江戸一と折紙をつけられた藤波の肩書に、これでもう三四度も泥をぬられた。