Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.707 Zeichen · 20 Bildschirme
……掏摸もなければ、ゆすり、空巣狙、万引、詐欺……なにひとつない。御番所も詰所も、まるっきし御用がなくなって、鮒が餌づきをするように、あくびばかりしているんでございます」
「なるほど、そりゃあ珍だの」
ひょろ松はうなずいて、
「江戸中の悪いやつらが、ひとり残らず時疫にでもかかって死に絶えてしまったのか。……あっしは十手をあずかってから、もう十年の上になりますが、まだ、おぼえもねえような滅法な話なので、いろいろ頭をひねってみましたが、かいもく見当がつきません。……心配というのはそれだけではない。じつは、南番所じゃアなにかはっきりと当りがついたらしく、同心の藤波友衛が、せんぶりの千太を追いまわして、しきりにあたふたしております。……むこうが追いこみにかかっているというのに、こっちは、あっけらかんと口をあいて眺めているというんじゃア、月番の北の番所としちゃ、じつにどうも遣瀬のねえ話なんで。……それで、森川の旦那さまも躍起となっていらっしゃるんですが、いまいったようなわけでどうにもしょうがない。はっきりした見こみはつかずとも、せめて、方角ぐらいはついてねえことにゃア、また、南のやつらの笑いものにされなくちゃアなりません」