Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
何しろ出入口はあれ一つですからねえ」
「鶴子という婦人は、王様のほかに誰かを待っているような様子はなかったかね。客か、それとも友達でも」
「ほかのひとは誰も待っていなかったと思います」
「どうしてそれが判ったね」
「昨夜、十二時少し前に、すぐこの崖下の素人屋の二階にいる花という縫子が松谷さんのところへ届け物をして、その帰りにここへ寄って話込んで行きましたが、何でも宗方さんが約束の時間に来ないので、鶴子さんがたいへんな焦れ方だったといったからです」
「それでそう思ったのか」
「どうだっていいじゃありませんか。妾ァ今ふいとそう思ったからそんな風にお答えしたんでさ。ひとの胸ン中なんぞ、はっきり判るもんですか。千里眼でもあるまいし」
「それでその娘は他にどんな話をしたか」
「鶴子さんは倖せだといってました。これァ昨夜に限らずいつでも申すんです」
「それだけか」
「あとは忘れましたねえ」
「その花という娘がここへ寄った正確な時間は何時ごろだ」
「来たのは十二時十分前ぐらいだったと思います。十分ぐらい話をしていると除夜の鐘が鳴り、それを聞くとおめでとう、といって駆け出して行きました。