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Japanische Klassiker mit Furigana

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まと

魔都

久生 十蘭

Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

真名古にとってこの品々はよほど煩悶の種になるのだと思われる。見ようによれば、まるでそれにお辞儀をしているようにも見えるのである。こんなことをするのはこれで二度目だが、そもそも、この品々は冷酷そのものともいうべき真名古警視をなぜこうまで悶えさせるのであろう。そういえば少し腑に落ちぬことがある。先刻、真名古が警保局で現場調査の説明をした時、何故か伊吹という洋服屋へ行って問合せをした条を除いている。そればかりではない。シガアレット・ホルダーの特徴にも、生乾きの壁に人が凭れた痕がついていたことにも、只の一と言も触れていない。専門家同士の間にはこんな些末なことはどうでもいいのかも知れぬが、日ごろ細心を誇る真名古の振舞としては、チト受取りかねる節があるのである。

惟うに、この品々には何かよほどの重大な秘密が含まれているのに違いない。慎重緻密な真名古がそれを口外せぬのにはそれ相当の理由があるのだろうと思われるが、それはともかく時計を見上げると早や五時十五分。フランス大使の乗った不定期急行はもう彦根あたりまで来ている。明朝大使が拝謁に行く午前四時までには、どんなことがあっても皇帝をホテルに帰して置かねばならぬのであるが、こんなところで煩悶などしていいのであろうか。