Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
ああ、その顔! 右の耳の下から唇の端まで斬り裂かれた傷が、アングリと口を開け、歯列がゾロリと奥歯のへんまで白く剥き出されている。右の眼玉は抉り取られ、空洞になった眼窩には、タップリと血潮が湛えられ、そこから流れ出した余沫が、口から溢れ出る血と合流して首筋の方へ滴り落ちている。腕も手も胸も無惨なまでに斬り刻まれ、その傷口が入り交って、そこに何か不思議な模様でも書いたような奇妙な印象を与える。
真名古は憮然としたようすで、突っ立ったままそれを見下ろしていたが、インバネスの裾をまくってハッチソンの顔の傍にドッカリと胡坐をかくと、しみじみとした声で、
「おい、ハッチソン、真名古が来た」
といった。月の光の中で、ハッチソンの白眼がギョロリとこちらを向く。見る見るそこからおびただしい涙が溢れ出して来た。
「おい、ハッチソン、これじゃア助からないな」
ハッチソンは微かに頷いた。真名古はハッチソンの手を握り、それを自分の胸のあたりへ引きよせるようにしながら、
「何かいい遺したいことはないか。俺はこれから失踪する身分だから、あまりくどいことは引受けられないが、手に合うことだったらやってやる」