Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
いやにだだッ広くなった舗道の上でゆらめくものはといえば、あちらこちらの横丁から吹き寄せられてきた雑多な紙屑ばかり。これがまるで生あるもののように、妙に生々と動き廻っている。
風のあおりに乗ってスーッと横辷りをしてゆくやつ、筋斗をしながら車道の方へ駆け出すやつ。街路樹に駆け登ってブラリと枝にぶら下る。手を組み合ってクルクルと調子よく旋回する。縺れたり離れたり、飛んだり跳ねたり、人気のないひッそりとした大通りを、ところせましと我物顔に跳ね廻っている。これこそは大都会の魑魅魍魎どもが、この東京の丑満時にほしいままに嬉戯するすがたなのである。
そういうひと時、深夜の寂寞を破って、並々ならぬ叫び声が銀座四丁目の四角で起った。耳をすますと、切々たるその叫声は、人殺し人殺しと連呼しているように聞きとれるのである。
東京の目貫の四角で一体何が起ったというのであろう。声のする方を眺めやると、タクシーの運転手らしき二人の人物が、服部時計店の方をふり返りふり返り、ドタ靴の音もかしましく宙を飛ぶように交番の方へ走って来る。その間にも絶えず聞きとりにくい鋭い叫び声をあげるのであって、寂然たるこの大通りに時ならぬ騒音をまきちらすのであった。