Japanische Klassiker mit Furigana
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さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Lesen Sie 魚の序文 (さかなのじょぶん) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.384 Zeichen · 21 Bildschirme
そのしぶとさが余計胸の中に来ると、僕は彼女の髪をひきつかんで、まるで、泥魚のように、地べたに引きずって帰って来た。
「君が、こんな一人合点をするから、前の男達も君を殴ったのだろう。僕だって、小刀の一ツも投げたくなるよ。――炭俵に入れられて、一日揚板の下へ押し込められた事があったッて君は云っていた事があったが、前の男の気持ちだって、何だか僕にはだんだん解って来たよ」
彼女は涙もこぼさないでしおれていた。風呂敷の中からメリンスの鯨帯と、結婚の時に着ていた胴抜きの長襦袢が出て来た。
「こんなもの置きに行ったって仕方がないじゃないかッ」
ふと彼女を視ると、僕の学生時代のモスの兵児帯を探し出して締めているのだ。何だか擽ったいものが身内を走ったが、僕は故意にシンケンな表情をかまえていた。
「君が腹の満ちた恰好で、一ツのものを夫に与えるのは、それア昔の美談だよ。一ツしかなかったら、二ツに割って食べればいいだろう、何もなかったら、二人で飢えるさ」
これは、素敵にいい言葉であった。僕は僕自身のこの言葉にひどく英雄的になったが、彼女には、それがどんなにか侘しく応えたのであろう。