Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「阿波へ様子を見に行ってくれたお前の兄の銀五郎が、帰ることはあろうけれど……」
「いいえ、弦之丞様にしましても、いつか一度は」
「アア、たみや……もうそれをいうておくれでない」白いかいどり姿が、雪くずれをしたように、ガバと、袂を顔にして泣き伏した。
「お嬢様、お嬢様。あなたに泣かれてこの乳母がどうしましょう。もっと……お強くなって下さいませ。いいえ、今が、アア今が、大事な時でござります。あなたはもっとお強くならなければなりませぬ」
「お前までが、そんな無理を」
「もうわずかな御辛抱……ジッとこらえて下さいませ。お嬢様のお手紙を持って、阿波へ行った兄の銀五郎が、今に、きっといい報らせを持って戻りましょう程に……」
お千絵は、どうしてこんな地底の部屋にいるのだろうか!
いうまでもなく、恋と慾の二道をかけている、旅川周馬の奸策である。
鏡の裏から、お綱の墜ちこんだ所は、昔、事あるごとに、甲賀組の者が、ここへ集合して隠密の諜しあわせをした評定場所。かれらの手にかかることは、みな、秘密であり他聞をはばかるので、相談や打ち合せには、必ず、宗家の穴蔵部屋に寄るものにきまっていた。