Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
かなしき友禅
かなしき友禅
捕まえられた恐怖よりも、引っ立てられてきた屋敷のすばらしさに、お綱は気を奪われてしまった。
なんという豪華な庭、数寄な建築。
いずれ何十万石という、大名の屋敷には相違なかろうが、女掏摸を成敗するため、わざわざ引き出した白洲にしては、あまり舞台が勝ちすぎる。
「これ」
編笠の侍は、お綱の肩を軽く押して、
「しばらくそこに控えておれ」と初めて笠の紐を解きにかかった。
ひょいと見ると、色浅黒く、眉毛の濃い顔だち。――オヤ、どこかで一度見たような……とお綱はフイとびっくりしたが、どこで見たというほどな、はっきりとした記憶はない。
「御前様、御前様――、只今帰りました」
廊下へ身を寄せてこういうと、すぐ前の一室、書院か主人の居間であろう、スーと一方の障子が開いた。
銀泥の利休屏風に、切燈台の灯がチカチカと照り返していた。青螺つぶしの砂床には、雨華上人の白椿の軸、部屋の中ほどに厚い褥を重ね、脇息を前において、頬杖をついている人物があった。
いうまでもなく、当屋敷の殿。金目貫、白鮫巻の短い刀を差し、黒染の絹の袖には、白く、三ツ扇の紋所が抜いてあった。――三ツ扇は誰も知る松平左京之介輝高の紋だ。