Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

千住で郡医となって、向島へは折々御機嫌伺いに出るのでした。開業していましたが、病人が来ても植木にかかっている時は、なかなか手離そうとなさいません。書生に、「先生、もうよほど待たせてありますから」と催促せられて、やっと立上るのでした。お母さんなどは、「ほんとにお父さんにも困るね。いつも土いじりばかりなすって、堅い手をしていらっしゃる。きれいな柔い手を、人はお医者のようだという位なのに」といっておられました。

それでも松の鉢植はどうやら持ち直して、新芽を吹いた時の喜びは大したものでした。鉢も立派でしたから、それを客間の床の台に据えて、その幹を手で撫でながら、「おれは植木の医者の方が上手かも知れない。蟠竜というのはこんなのだろう。これを見ると深山の断崖から、千仞の谷に蜿蜒としている老松を思い出すよ」と仰しゃるので、皆その大げさなのをおかしいとは思いながら、ただ「ほんとですね」とだけ申しました。相槌を打たぬのがお気に召さないのでした。

その外に石榴の鉢植がありました。石榴は直水を嫌うからと、鉢が大きな水盤に入れてありました。それに実がいくつか附いた時などはお喜びにもなりますが、誰にでも褒めてもらいたいのでした。