Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
でなければ渡しを渡って花川戸へ出て、待乳山を越して、横手から観音様へ這入ります。母や祖母と出ると時間もかかりますし、留守居も頼まねばならぬので、たまたまにしか連れて行ってもらわれません。
たしか尋常小学の三年生の時でしたろう。学校の成績がよくて、首席になったので、私も大喜びでしたし、家内中の誰もが、「よかった、よかった」と褒めて下さいました。
その晩のことです。お母様が、「まあ、お喜びよ。今度の日曜には、兄様が浅草へ連れて行って下さるとさ」とおっしゃいます。
「え、ほんとう。」
私は目をくりくりさせて驚きましたが、よく聞くと、どういうお考か、行くのは私だけだとのことで、心配になりました。
「お母様も一緒だといいのだけれど」とはいいましたけれど、とにかく嬉しいので、ただその日が待たれました。
日曜日は四月始めのよく晴れた日でした。
「さあ行こう」と、お兄様は下駄履きで先に立たれます。
「お土産をね」と、祖母様が目送されます。
毎日急ぎ足で学校へ通う道をぶらぶら歩いて、牛の御前の前を通り、常夜灯のある坂から土手へ上り、土手を下りて川縁へ出ると渡し場です。ちょうど船の出るところでした。