Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme
亡き父亡き母の事を思出す瞬間だけ老人はおのれの年齢を忘れて俄に子供になったような何ともいえぬ懐しい心になる。けれどもそれは全く其の瞬間だけのことである。老人はもう六十八、其妻は五十九になった。亡き父母の享年よりも既に数年を越えている。官職に在る事二十年実業界に在る事又更に十幾年、退隠してから既に早や三年になった。啻に父母のみではない。自分より年上のものは叔父も叔母も知友も皆世を去った。児女は成長して一人一人に膝下を去り今は遂に居残るものもない。
長男は結婚すると間もなく新に家を建てて別居した。次男は地方の県庁に勤めている。三男は今日の朝洋行した。娘は二人とも嫁に行った。庭ばかりでも三百坪からある広い邸内に残るものは老夫婦二人のみである。
老人は白魚の吸物を二杯までかえたが、飯は軽くよそって二杯ときまっているので食事は忽ち済んでしまう。夫婦とも歯が悪いので香の物はたべない。給仕の女中は十六の時から今年二十三になるまで使われているので、二杯目の御飯をよそうと黙って飯櫃から先に片付けて行く。老夫婦が湯呑から番茶を一口飲み火鉢の火に手をかざした時には膳は二つとも既に運去られて、八畳の間は一際がらりとしたように思われた。