Japanische Klassiker mit Furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Lesen Sie 黄灯 (こうとう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.262 Zeichen · 21 Bildschirme
「恐い癖に、余計なことを云わなけりゃ好いのに」
云いたいことを云ってしまった女房は、やっと体が軽くなったので、土間へおりて燈の微暗い処で、かたかたと音をさしはじめた。主翁はその音を聞きながら苦笑をうかべて、何か口の内でぶつぶつ云った。その唸きが女房の耳におかしく聞えた。
「ほんとに、この寒いのに、よけいなことを云うものだから、しょうがないよ」
女房は豆腐を入れた岡持と番傘を提げて出て往った。主翁はその後姿を見送っていたが、障子が閉まると舌うちした。
「ばか」
食卓の上には微暗い電燈がさがっていた。主翁はその電燈の球をちょと見た後で、右側をちらと見た。そこには庖厨の方へ出て往く障子があった。障子には二処三処穴が開いて暗い燈影がそれにかかっていた。その障子に物の影が薄く朦朧と映っているように見えた。主翁は軽い悪寒を感じながらおずおずした眼をそれに向けた。何の影らしいものも見えなかった。主翁はやっと安心して盃を持ちながら一口飲んだ。
土間の方が気になって来た。主翁はまた左側へ眼をやった。じめじめと降る雨の音が聞えて来た。主翁の心は豆腐を持って往った女房の方へ往った。